さよならさえ、嘘だというのなら

凪子と初めて言葉を交わしたのは

彼らが転校してきて二週間後

夏の終わりの日曜日

俺は予定もなく
昼近くに目を覚まし
夕方までダラダラしていたら母さんに捕まり、町指定のゴミ袋を買いに行かされる羽目となる。

部活でも私生活でも
女子に使われる率の多い俺。

今日は日曜だから
多くの商店街は閉まってる。

わかんねーよな
普通
日曜日が稼ぎ時じゃねーの?

商店街を突っ切って
コンビニまでチャリを飛ばし
立ち読みしてからゴミ袋を買い
また
チャリで自宅に戻る途中

対向車線から
須田凪子の姿を見つけた。

宮原薬局の近くで
彼女は足を止めていた。

そう
足を止めていた。

進みたいけど進めない
なぜなら
カンスケさんがカエルの人形の隣に座っていたから。

通れないなら戻ればいいのに

彼女は蛇ににらまれた蛙のように、動けず身体を硬くする。

カンスケさんは凪子に気付いてないだろう。
ただ凪子だけが異常に敏感になり、動けず困っていた。

自意識過剰じゃね?

見た目がホームレスで怖い顔したカンスケさんにも問題はあるけれど、凪子の怯えた表情に不快感を感じてしまう。

まぁ
俺には関係ないけどさ。

俺はチャリをクルリと逆方向に向け
別の道を通って家に帰ろうと思うのだけど

今度は俺の足が動かない。

凪子みたいだ。

知らん顔して通り過ぎたいけど
見てしまったら
黙ってられない性格の俺。

大きな声を出されて
殴られるかもしれないけど

いいや!

ある程度の覚悟をして

凪子の傍までチャリを走らせた。
















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