結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウは、何も言わず乱暴にレナの服をたくしあげ、強い力でわし掴むようにレナの体を愛撫した。

「やっ…痛いよ、ユウ…。」

ユウの湿った舌が蛇のように激しくレナの肌を這う。

「お願い、やめて…。」

いつもとは別人のように乱暴にレナを抱くユウに、レナは恐怖を感じた。

「いや、やめて!!」

レナが必死に抵抗しても、ユウは大きな手で強くレナを押さえつけ、強引にレナの中へと入り込んだ。

(どうして?!)

レナはユウとは違う知らない人にそうされているような恐怖と痛みの中で、涙を流した。


すべてが終わると、ユウはベッドで涙を流しているレナに背を向けて、低い声で呟いた。

「これで満足?」

「えっ…?!」

「他の男と一晩過ごした後で、オレの所に戻って来るなんて…その男とオレの体、どっちがいいか比べようとでも思ったの?」

「何言ってるの…?!」

「こんなオレより、いい男見つけたんだろ?」

ユウは冷たい声でそう言うと、振り返って意地悪く笑みを浮かべた。

そしてユウは真顔で、淡々と呟いた。

「いいよ…。どこへでも好きな所へ行きなよ…。オレももう、レナの優しさ押し付けられんのも、泣き顔見んのも、うんざりだ…。お互いこれ以上、無理して一緒にいる必要なんてないだろ?」

「それ…本気で言ってるの?」

「…本気だよ。」

思いがけないユウの冷たい言葉に、レナは、愕然とした。

そして、こらえようのない涙が、レナの頬にいくつもの筋を作る。

「ひどいよ…。やっぱりユウは、私のことちっとも信じてくれてない…。私は、ユウのこと、信じてたのに…。」

レナは乱れた衣服を軽く整えると、涙を拭いながらユウの部屋を出た。


そして、しばらく経った頃、玄関のドアが閉まる音が、ユウの耳に微かに響いた。


レナは、行く先を告げることも、ユウに別れを告げることもなく、部屋の合鍵とユウの車の鍵をテーブルに残し、二人で暮らしたこの部屋を出て行ったのだった。

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