結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
レナはユウの傍らで手を握り、ずっと祈っていた。

(ユウ…お願い…戻って来て…。お願い…生きて…。)


ユウの睫毛が微かに揺れ、静かにそのまぶたが開いた。

眩しい光の中で、ユウの視界に真っ白なドレスを着た人影が飛び込んでくる。

(…天使…?)

「ユウ…!!」

その人影は、真っ白なドレスを着て涙を流しているレナだった。

ユウは、なんとか動かせる左手で、そっとレナの頬に触れる。

「天使かと思った…。」

「先生呼んで!!」

マユがシンヤに大声で叫ぶ。

「ユウ…良かった…戻って来てくれて…。」

「ただいま…。」

「おかえり…。」

二人は一緒に暮らしていた頃のようにそう言って、静かに笑みを浮かべた。


慌てて医師と看護師が病室にやって来ると、血圧を図ったり脳波を調べたり、様々な処置をした後、もう大丈夫だと言い残して去って行った。


病室を訪れていたみんなは、ホッと息をつく。

「心配したのよ!!バカ息子!!」

「おふくろ…。」

(オヤジと同じこと言ってるよ…。)

「とりあえず、安心した。みんなにもユウ無事だって伝えるから。」

「うん…。みんなによろしく。」

タクミは笑って手を振り、病室を後にした。

「何はともあれ、本当に良かったわ。アンタ、メンタル弱いけど体はタフねぇ。」

「それ、褒め言葉なのか…?」

「とりあえず、帰るか。ユウ、しっかり休んで早く良くなれよ。」

シンヤは病室を出ようとして踵を返すと、ユウのそばに来て小さな声でそっと耳打ちする。

「せっかく命拾いしたんだから、伝えたいことはちゃんと言葉にして、口に出して言うんだな。そうすれば…ちゃんと、伝わるから…。」

「ありがとう、シンちゃん…。」

マユとシンヤが病室を去り、ユウの傍らでユウの手を握るレナを見て、リサと直子は顔を見合わせる。

「しばらく、二人っきりにしてあげる?」

「そうね、そうしようか…。」

「私たち、安心したらお腹も空いたことだし、ちょっとその辺のカフェにでも行って来るわ。レナちゃん、しばらくユウをお願いね。」

「ハイ…。」


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