結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
ユウとレナは、マユとシンヤを残し、部屋を後にした。


二人っきりになった部屋で、マユとシンヤの間に沈黙が流れる。

シンヤはマユの手を引いてソファーに座ると、マユの手を握りしめた。

「マユは、オレといるの、もう嫌?」

マユは静かに首を横に振る。

「オレは、マユと一緒にいられたら…それだけでいいんだ。」

「シンヤ…。」

「マユが自分を責めるのを見てるのがつらかった…。どんなにマユが悪いんじゃないって言っても、マユの耳には届かなくて…。オレはなんて無力なんだろうって…。本当は離れたくなんてなかったのに、一緒にいるのにマユに避けられてるのがつらくて、別々に暮らそうなんて言ったけど…。本当は苦しんでるマユをすぐ隣で支えたかったのに…オレにはマユを抱きしめてやることもできなかった…。ごめん…。」

マユはうつむきながら涙を流している。

「私といても、シンヤは幸せになれないでしょ…。もっと家庭を大事にしてくれる人を探して、シンヤの子供を産んでもらって、その人と一緒に温かい家庭を築いた方が、シンヤにとっては幸せでしょ…。」

うつむき涙を流しながら絞り出すように話すマユを、シンヤは強く抱きしめた。

「マユは、いつになったらオレの気持ちに気付くの?」

「えっ?!」

シンヤは愛しげにマユを見つめ、頬に流れる涙を指で拭う。

「オレにとって…マユがそばにいて笑ってくれる以上の幸せなんてないよ…。マユの他に欲しいものなんて、ひとつもないんだ…。」

「シンヤ…。」

マユはシンヤの背中に腕を回し、ギュッと抱きしめた。

「私も、シンヤと一緒にいたい…。」

「じゃあ…もう一度、ちゃんと夫婦になろう。一緒に寝て起きて、なんにもなくていいから、マユと一緒の時間を過ごしたい。」

「うん…。」

「マユがつらい時にはオレがそばにいて支えるから、もっとオレを頼ってよ。忙しくて家事ができない時はオレも一緒にするし、疲れてイライラしてるマユだって、オレは全然嫌じゃないんだ。」

「ホントに…?」

おそるおそるシンヤの顔を見上げるマユを見て、シンヤは優しく微笑んだ。

「だってオレは、マユの夫だから。どんなマユでも、オレにとっては世界一の奥さんだから。」

「シンヤ…。ありがとう…。」

「もう一度、オレの奥さん、やってみる?」

「うん…。」

そうして二人は、互いの温もりを確かめ合うように抱きしめ合った。

「マユ、愛してる。」

「私も…。」

「言ってくれないの?」

マユは顔を真っ赤にしながら、いたずらっぽく笑うシンヤの耳元で囁いた。

「シンヤ、愛してる…。」


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