殺人姫
「目ぇギラギラだな。一っちょ前に殺人鬼面してやがらァ」
「早く・・・早く・・・はやく、ハヤク・・・コロス」
「そうだなァ、どーしようかねぇ・・・」
へらへらと歪む口の端がおどけたように、私の様子を楽しんでいる。


頭の中、またまっしろ・・・


この人を刺すためだけに存在しているような、変な気分。さっきまで何してたっけ?この輝くナイフ、その先端の少しの血液は、誰のもの?目の前の人は誰だっけ、思い出せない。さっきまで私、何をして、何をされて、何を感じて、何に疲労して、何に絶望感を抱いて、




私は・・・




この人を刺せば、わかるかな?



「かもぉーん」
シルバーの指輪をごたごたとつけた右手の親指が、自らの左胸をさす。
さっきと同じ、力の強い誰かに押されるような、本当に自分の体が動いているのがどうかさえ忘れる理不尽な体。これ以上無い瞬発力を使って、男の左胸へナイフを突き通す



その1センチ前。



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