その瞳に映りませんように


「ハシノってさー。本当バカっぽいよねー」


「そこがいーとこじゃん。悩みとかなさそうでー」


――え?


トイレのドアを開けようとした瞬間、

中から聞こえた声によって、体がフリーズしてしまった。


「でも時々うざいよねー。何でも笑っておけばいいって感じでさー」


「あ、分かるかもー。深い話とかする気なくすよねー」


「もーほんと、土曜あいつ来ないでくれて助かったよー」


「だーかーらー、おめーは彼氏できたからって調子乗りすぎー」


ぎゃははははー!

濁った笑い声が扉の奥に響いていた。


私は急いでその場を離れ、あてもなく廊下をさまよう羽目になった。


どうやら頭の中もフリーズしてしまったらしい。




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