ハロー、マイファーストレディ!
「相変わらず、つれないな。ジョークも通じない?」
「気分が悪くなったら、ナースコールを押してください。すぐに、特別室専属の看護師が駆けつけて来ますから。」
「やたら丁寧すぎて肩が凝る対応より、全くデレないナースの方がいいんだが。」
「ベッドに横になって、楽な体勢で安静にしてください。」

相手の発言を全て華麗にスルーすると、私はトレイを持って立ち去ろうと踵を返した。
その瞬間、男の手が私の腕を掴んだ。
先ほどの握手の時のような、優しく包み込むような触れ方ではない。
その手は強い意志を持って、私を拘束している。

「ちょっと、待てよ。」

わずかな苛立ちを含んだような言葉に、私の中にたちまち不快な感情が広がった。

「離して下さい。これでも、忙しいんです。あなたの気まぐれに付き合っている時間はありません。」

きっぱりと言い切って、首だけ振り返り、彼の目を睨み返した。
権力とお金さえあれば、誰でも言うことを聞くと思わないでほしい。
私は、真面目に働きたいだけだ。

「仕事を邪魔したなら謝る。」
「謝らなくても結構ですから、一刻も早く手を離して下さい。」
「そうは、いかない。まだ、目的を果たしてない。」
「ここは病院です。治療以外に目的なんてないはずです。」
「もちろん。でも、副次的な目的もある。君を指名したのは、その為だ。」
「私を苛つかせるのには、十分成功していますよ。」

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