ハロー、マイファーストレディ!

『政界のプリンス』

人は俺、高柳征太郎(たかやなぎせいたろう)のことを、そう呼ぶ。
俺としては全く気に入っていないが、それが悪意からではなく、むしろ好意的なイメージで使われていることを知ってからは、喜んで利用している。

大臣経験のある祖父と父を持ち、政治家一族の直系の一人っ子で、当たり前のように、跡継ぎになった。
決められたレールの上を歩くことに反発心を抱いたこともあるが、やはり血は争えないのか、政治の世界に足を踏み入れた途端、一気に仕事にのめり込んでいった。

大学を卒業してから、父の秘書を務めて四年目。
父が派手な女性スキャンダルにより引退を強いられたため、25歳と半年という若さで総選挙に初出馬することになる。
元々、小さい頃から鍛えられていたため、弁は立つ。ベテラン議員も思わず頷くほどに、演説は得意中の得意。
それに加えて、父親譲りのやや甘いマスクだ。
マスコミがこぞって政界期待の星などと騒ぎ始めたため、難なく初当選を果たした。

それから、早くも九年。
先の総選挙で四回目の当選を果たした俺は、保険福祉省の大臣政務官に就任した。34歳という若さでの異例の抜擢だ。

しかし、俺にしてみれば、まだまだ初めの一歩にしか過ぎない。


俺の目標は、
この国の『いちばん』になることで。
狙うはひとつ、
『内閣総理大臣』の椅子のみだ。


それは、祖父も父もあと一歩のところで叶わなかった夢で。
幼い頃に必死に考えてたどり着いた、
俺の『生きる理由』だった。
< 2 / 270 >

この作品をシェア

pagetop