ハロー、マイファーストレディ!
「別に、夜中だろうが、早朝だろうが、好きな時間に勝手に入ってきて叩き起こしても構わない。」
「無茶言うなよ。ただでさえ、皆気を遣ってるんだ。」
「気遣いは無用だ。見られて困るものはない。」

お前はなくても、真依子ちゃんにはあるだろうという言葉を、俺は渋々飲み込んだ。隣に座るファーストレディはやや呆れた顔で、仕方ないとばかりに微笑んでいた。一度言い出したら、どんな手を使っても思い通りにしてしまう、この男の性格を知り尽くしているのだ。

「分かった。好きにしろ。でも、あいにく俺も友人のセックスを鑑賞する趣味はないからな、用事がある時には電話をする。いいところだったとしても、必ず出ろよ。」
「ああ、分かった。さすがに、訪米中はほどほどにする。」

このまま征太郎の思い通りにさせるのが癪で、意地悪く笑って忠告しても、征太郎はしれっとした顔で言葉を返す。代わりに気まずそうな顔で慌てだしたのは真依子の方だった。

「ちょっと!二人とも何言って……」

赤くなった顔を手で覆い、必死に取り繕おうとする彼女を見て、初めて会った頃を思いだす。幾分か成長したとはいえ、とても子どもを二人産んだとは思えない初々しさだ。

「ははは、真依子ちゃんも、成長しないねえ。」
「何も恥ずかしがることはない。深刻な少子高齢化社会において、首相自ら率先して子作りに励むことは、むしろ褒められるべきことだと思うが?」
「バカじゃないの?真顔で何言ってるのよ!!」
「日本の総理大臣を捕まえて、バカ呼ばわりするのは、君くらいだ。」
「ああ、最強のファーストレディだ。」
「バカに、バカって言って何が悪いのよ!!」

どこかで聞いたような台詞を叫びながら、赤面するファーストレディと、そんな彼女を見て上機嫌の首相を乗せて、黒塗りのキャデラックはボストンの街を走り去ってゆく。

……ジェットコースターのようなスリリングな運転で、大勢のパパラッチを振り切りながら。

現役のファーストレディが懐妊したという、珍しくもおめでたいニュースが世界中に流れるのは、もう少し先の話だ。


【ハロー、マイファーストレディ! 完】



最後までお付き合いいただきまして、心より感謝申し上げます。
更新の度に増えていく読者数と、PV数、そして感想ノートにいただいたコメントが何よりの励みでした。
あとがきという名の反省文は、いつものようにファンメールにてお送りします。
そして、本日より本作のスピンオフ作品『ハロー、マイセクレタリー!』を表紙のみ公開しております。真依子と征太郎がメインではありませんが、この作品の後日談を短編で書く予定です。
それでは、皆様、また会う日まで!
暑い日が続きますが、どうかご自愛下さい。

2016.8.2 木崎湖子


※あとがきファンメール送信しました(2016.8.8)
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