ハロー、マイファーストレディ!
「内海真依子の両親は10年前に揃って他界してる。高校生だった真依子は、都内で団地住まいだった母方の祖母に引き取られてる。その祖母も三年後に亡くなったが。」
「天涯孤独というやつか。」
「いや、父方の叔父家族は存命だ。もっとも、縁を切ったも同然な状態らしい。祖母に引き取られる時に姓を変えてるしな。」
「意外と苦労人だったんだな。」
「ああ、両親が自殺した直後には相当マスコミに追い回されたみたいだからな。姓を変えたのも、おそらくそれが原因らしい。」

自殺、マスコミ…
嫌なキーワードが出てくる。
自分でも自然と眉間に皺が寄るのが分かった。

「まさか、犯罪者か?」
「いや、犯罪は犯してない。むしろ、世間は彼等を被害者だと思ってるだろうな。」
「どういう、ことだ?」

答えが早く聞きたいような、そうでないような不思議な感覚だ。
しかし、彼女のことを知る上でおそらく最も重要な事項なのだろう。
透は、声をひそめつつ、それでいて事実をはっきりと告げた。

「内海真依子の旧姓は、
村雲(むらくも)だ。」

その名前を聞いた大川は、はっとしたような顔をする。

「10年前、もしかして…」

思い当たる節があるのか、大川の口が記憶を辿るようにゆっくりと動き出せば、透があっさりと続きを口にした。

「お察しの通り。内海真依子は…
あの村雲洋一(よういち)の娘です。」

透は、何か良い考えでもあるのか、最高に上機嫌でほほえんだ。
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