ハロー、マイファーストレディ!
そして、カップの中の琥珀色の水面を見つめながら息を吐くようにそっとつぶやいた。

「今の真依子も悪くないけど、昔の彼女はもっと楽しそうに生きてたわ。しかも、あの美貌でしょ?本当に輝いてた。友人としては、また何とかしてあの頃に戻って欲しいのよね。」
「やはり、あの事件が彼女を変えたのか?」

いきなり核心を突いてみても、彼女は驚く素振りを一切見せなかった。
それくらいの調べがついていることは、お見通しのようだ。

「その通り。あの日以来、真依子はほとんど笑わなくなったの。」
「恋愛を封印してるのも?」
「ええ、事件の後からね。彼氏と呼べるような相手は居なかったけど、昔はちゃんと恋にも前向きだったのよ。今のあの子からは、想像もできないでしょうけど。」

遠い目をして柔らかく微笑む彼女を見ていると、昔の内海真依子はさぞかし魅力的な女だったのだろうと思われた。
美人は、ただそれだけでは人を惹きつけない。やはり、内面的な輝きを持ってこその美なのだ。
今より遙かに魅力的な内海真依子に会ってみたい衝動に駆られ、俺を突き動かすものが何なのか分からないまま、次の瞬間には口走っていた。

「それなら、少しくらいは貢献できるかもしれない。」

彼女が過去に囚われて輝きを失っているのなら。
その過去に決着を付ければいい。
俺が今から実行しようとしている計画は、それをするにはまさに打ってつけの代物だ。
うまくいけば、お互いに大きな人生のメリットとなるはずだ。

「じゃあ、詳しいお話をお聞かせ願おうかしら?閉店後にVIPルーム使った口実が欲しいから、どちらかをカットしながら聞くわ。腕は確かだから安心して。」

俺は目配せの後、ずずいと透を彼女に差し出した。
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