恋愛優遇は穏便に
月曜なので週末にかけての受注のFAXがかさみ、それを処理するだけでいっぱいいっぱいだった。

気づけば昼休みにさしかかっていた。

残りの仕事は午後に回し、お昼をとることにした。


「嘘ですよね」


「え?」


昼休みになり、高清水さんがお昼を買って戻ってきたときだった。


「映画みて泣いた話です」


そういって、高清水さんは怪訝な顔をしてこちらをみていた。


「え、そうですけど……」


どう説明していいかわからないし、高清水さんに言うことでもない。


「やっぱり所長と何かあったんですか?」


「別に何もないですよ」


「……ホントかなあ」


高清水さんにじっと見つめられて困ったので、しぶしぶお茶を飲んで、それから話を変えてみた。


「あ、あの。研修、どうだったんですか?」


「本社の人と混じって電話研修の延長みたいな感じでした。役職の人たちは役職だけのかたまりで集まって研修やってましたけど」


「そうなんですね」


電話研修みたいな、あの結束感の中での研修だったのか。

あの中に混じって参加してみたかった気持ちがふくらむ。


「でも、所長は忙しかったみたいで」


「え?」


私の驚きように、高清水さんもびっくりして開けた紅茶のペットボトルのふたを机の上に落とした。


「聞いてませんか? 夜のレクリエーション中、宿泊施設からしばらくの間抜けていたみたいです」


「……そうなんですか?」


「なんだ。森園さんのところへいったとばかり思ってましたけど」


ちらりとみながら、高清水さんは紅茶のペットボトルに口をつけていた。


「新規の取引先も増えてきているみたいって栗林さんもいってたので、その関係かもしれませんが」


営業の仕事、忙しいんだと納得しながら、残りのお弁当を食べた。
< 170 / 258 >

この作品をシェア

pagetop