恋愛優遇は穏便に
「どういうことですか?」


政義さんは机に両手をついて、勢いよく立ち上がって私を見下げる。


「政宗の彼女、ボクのものになっちゃったから」


「えっ!」


政宗さんの彼女を略奪したってことか。

気づけば政義さんは私の左隣に立っていた。

その銀色のふちのメガネからみられるだけで、胸が張り裂けそうになる。


「政宗の昔のこと、教えてあげるって言ったよね」


「そうです……けど」


「そういうわけなので、さて、むつみチャンどうしようか」


どうしようか、と言われても返す言葉がみつからない。


「……で、今、その彼女さんはどうしたんですか」


「結婚したよ。別の男と」


政義さんは腰に手をあて、けろっとした態度をとっていた。


「それで、よかったんですか? だって、政義さんのこと、愛してたんですよね」


「んー、どうだろうねえ」


「どうだろうって、結局、政義さんが政宗さんの彼女をとったことにかわりはないじゃないですか」


「真相は彼女しか知らないよ。だって彼女が勝手にボクに好意を示してくれたからその好意にあまんじただけだよ」


「お兄さん……」


「まあ、過ぎた話してもしかたないね。これからの話をしなくちゃ」


低く響く声は甘くせつなく心をかき乱すように聞こえた。


「これからどうなっていくんだろうね。ボクも政宗もむつみチャンも」
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