初恋も二度目なら
「あ、部長」
「なんだ」
「カーディガンを着たいので、ちょっと止まっていいですか?」
「ああ。バッグ貸せ」
「すみませ、ぎゃ!!ぶちょうっ!?」
「髪上げた方が着やすいだろ?」
「あぁ・・そう、ですね・・・」

そうよ。今日は、両サイドを後ろでひとつ、お団子にしてるから、後ろ髪をおろしてる状態で・・・。
だから部長の言うとおり、長い後ろ髪を上げ持ってくれてる方が、カーディガン着やすくて・・・。

私は精一杯早くカーディガンを袖に通すと、「はぃ、できました」と言った。

「どうもありがとうござ・・・」
「今日は髪をおろして正解だったな。背中が露出してるぞ」
「なっ、何を言ってるんですか、部長はっ!これは“露出”じゃなくて、“少し開いたデザイン”なんですっ!」

ハイネックのカットソーは、後ろでボタンを一つ留めるデザインになっている。
だからその下数センチが、楕円状に開くんだけど・・・。
ブラをしててもはみ出さない程度を、「露出」と言うの!?

・・・えっと、それより・・・。
私がクルッと後ろをふり向いても、部長はまだ私の後ろ髪を上げ持ってくれているから・・・。

「ぶちょ、う・・・すごく、間近・・・」と途切れ途切れに私が呟くと、部長はそっと手を離してくれた。

私の後ろ髪が、ハラリと落ちる音がしたような気がした。
でも部長はまだ、私の間近にいる。
それだけじゃなくて、部長はもっと私に近づいた。

「小夜。今から俺んち来るか」


< 170 / 256 >

この作品をシェア

pagetop