初恋も二度目なら
「部長、どうもありがとうございました。ではおつかれさまで・・・ちょっと部長!!」

人が挨拶をしている途中なのに・・じゃなくって!

部長は私の手を掴むと、地下鉄の駅へズンズンと歩き出した。

「あの!部長?どこ行くんですか!?」
「Rシネマ」
「・・・え」と私は言うと、そのまま立ち止まった。

私に合わせて、部長も立ち止まった。
だけど手は離してない。

「観たいんだろ?“ワンダフル・デイ”」
「え、ええっと、でも、それ・・・」
「晩メシ食べに行く時間なくてごめん」
「いえっ、そんな!謝っていただかなくても・・・」

なんか部長・・・ヘン?じゃなくて、変わった・・そうそう。変わったよね。
さっきの「ありがとう」といい、今の「ごめん」といい、目の前にいる部長には、人間味があるというか。
ぶっきらぼうで命令口調なのは相変わらずだけど、ちょっと距離が縮まったような、近まったような・・・なんだろう、これは。

とにかく、部長に「ごめん」とまで言われたせいか、断ることができなかった私は、結局部長と一緒にRシネマへ行くことになった。

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