初恋も二度目なら
「俺たちのことは社内の奴らには言うな」と長峰さんに言われたことで、私は「言う・言わない」ことすら、全然考えてなかったことに気がついた。

「なんで?」
「別れたときがめんどくせーだろ」

おつき合いし始めて、すでに彼が別れることを考えていることが、少し悲しかった。
だけど私は、社内恋愛は未経験どころか、誰かとおつき合いした経験もない。
しかも恋愛の経験値はゼロ。
きっと彼の方が現実的な考えを持っているんだろうと考えた私は、「分かりました」と答えた。


長峰さんは、自信家だけど、決して浮ついていない。
つまり自分に自信を持ってる人だ。
営業成績が1位なのは努力した結果だけど、それを表に出さない。
「そうしたいからしてるだけだ」と簡単に言って、周囲から賞賛を受けたりちやほやされても、ごく当たり前と言った感じで、サラッと受け流す。
それすら見事にキマっていて・・・。

それに、苦行に耐えるべく、嫌々必死にしてるんじゃなくて、爽やかな笑顔のまま、それでいて、していることに全集中力を傾けている、みたいな感じ。
私から見たら、長峰さんって何て器用に生きてるんだろうと思う。
彼とは対極にいる私と、なぜおつき合いしているんだろう、とも思う。

でも長峰さんのことは、会うたび・・ううん、会わなくても、どんどん好きになっていくばかりで・・・。
募っていく思いをとめることができない。

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