初恋も二度目なら
「そのコンセプト、すっげー怪しい」
「でもね、部長。このお教室、かなり人気高いんですよ。もうずっとキャンセル待ちで、やっと空きが出たんですって。なので私、代わりに“美しい歩き方講座”を受講してました」
「ふーん。別におまえは料理習わなくても、十分美味いメシ作れるじゃねえか」
「そ、そうですか?」

確かに・・・。
部長は、いつも私が作る料理を「美味い!」と言って、全部食べてくれたのよね。
私自身、料理がど下手なレベルだとは思ってないし。
家族以外の誰かに個人的に手料理をふるまったのは、長峰部長、あなたしかいない・・・。

思い出にふけりつつあった私を、「卜部」と呼ぶ部長の低い声が、現実に引き戻した。

「は!はいっ」
「今度おまえの手料理ごちそうしてくれ」
「あ・・・はいっ」
「おまえの場合何でもいけるが・・・トップバッターは、やっぱハンバーグだな」
「そうでしたね。じゃあ・・・」

と私が言いかけた時、他の社員がゾロゾロと出社して来たこともあって、結局私たちは、特に約束もせずに、そのまま営業フロアへ歩いて行った。


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