恋のお相手は小さな男の子
「もう」
そう言ってぷうっと頬を膨らませても、佑真君は馬鹿な奴を見たと言わんばかりにへらへら笑っているだけ。
そして唐突に私の名前を呼ぶ。
「葉月!」
「何?」
ぶすっとして聞き返す私に、またしてもニヤッと意地悪な笑みを向けてくる佑真君。
「俺、天才なんかじゃねぇから。数学教師の父親が教えてくれただけ。残念だったなぁ」
それだけ言うと、スタスタとまた歩き出す。
えっと、……佑真君のお父さんが数学の教師で。
だから、お父さんが数学を少し教えてくれていたって事だよね。
それって……、
全然天才じゃないじゃん!!
「う、嘘ー!」
静かな公園に響き渡る私の声。
その瞬間、小さくなった佑真君の後ろ姿の肩が僅かに揺れた気がした。
こうやって私が叫ぶのを佑真君は分かっていたんだと思う。
ほんと、……ムカつく。