瞬く星の下で
体の調子はいいし、働くぐらい自分でもできるはず。



取り敢えず親切そうな人に声をかけよう。



沙羅は人を探して辺りを見回す。



薄暗い路地で、人気がない。



気づかないうちに、入り込んでしまったみたいだ。



戻らないと、と後ろを向く。



「お嬢さん」



振り向いた沙羅の前に、2人組の男がたった。



「何ですか?」



「こんなところでどうしたんだい?」



ぞくっとした。



怖い。



沙羅は、そろりそろりと後退する。



「……迷って、しまって」



「黒髪に、青の瞳か」



確かに、沙羅の瞳は青い。



フランス人の祖母譲りだ。



「まさか、王族か?」



「ち、違います。あの、失礼します!」



走り出そうとした沙羅の腕を、男がガシッと掴んだ。



「残念だったな、お嬢さん。ここに迷い込んじまったのが運の尽きだ」




「いや!離して!」



だが、沙羅が敵うはずもなく、ずりずりと引きずられていく。



奴隷、という言葉が沙羅の頭に思い浮かんだ。



そんなの絶対にいや。



必死に抗い続けるけど、全く逃れることができない。



次第に沙羅は疲れてきて、抵抗する力が弱々しくなった。



体の調子は良かったとはいえ、1年の4分の3をベッドの上で過ごしてきた沙羅は、格段に体力が少ない。



仮に逃れたとしても、逃げ続けることは不可能だった。




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