瞬く星の下で
丘の下の方に、たくさんの人が見えた。



市場なのだろうか。



露店がずらりと並んでいる。



なぜか、沙羅はその光景に見覚えがあった



どこ、だったかな……?



沙羅は記憶を辿る。



病院だったことは確か。


そう。



本の挿絵で見たんだ。



『アラビアンナイト』



私が大好きな物語。



そして、私が憧れていた世界。



その挿絵とそっくりなのだ。



「うわぁ………!」



夢みたいだ。



この世界も、自分がここにいることも。



夢じゃ、ないよね。



沙羅は一歩踏み出す。



柔らかい草の感覚。



初めての感覚。



こうして外に出ていることが、全て初めての経験なのだけど。



こんなにたくさんの人を見ることも、熱気に包まれることも。




「可愛いお嬢さん。甘いお菓子はどう?」



「洋服はどうだい?綺麗な柄がいっぱいあるよ!」



あてもなくフラフラと歩いている沙羅に、たくさんの物売りが声をかける。



「ごめんなさい。お金がないの」



そう断って何度目か、沙羅は困ったなと首を傾げた。



今のところはお金がなくても大丈夫だが、これからが困る。



お金がなくては何もできない。



こういう時はどうすれば良いのかな?



ムムム、と唸っていた沙羅は、何かを思いついたようにポンと手を打った。


「働けるところを探そう」








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