クリアスカイ
一通り話したところで修二はコーヒーを口にした。
須藤は腕を組んだまま、じっと何かを考えているようだった。
「おい。コーヒー。」
修二は須藤の前に置かれたままの缶コーヒーを弾いた。
「わかってるよ。」
須藤は返事だけしてソファーにもたれかかった。
暫く互いに無言でいたが、先に沈黙を破ったのは須藤だった。
「それで、修二はどうするつもり?」


修二は煙草の煙を天井に向かって吐くと、
「もう一回、アツシに会ってみる。」
と答えた。須藤は何も言わずコーヒーを口にした。


修二はわかっていた。須藤が賛成していない事を。
他人の事情に首を突っ込まない主義の須藤にとって、修二の決断は納得がいかないに違いなかった。
「ほっとけばいいのに。」
須藤は露骨に不機嫌そうな口調でボソリと言った。
「そう言うと思った。」
修二は煙草を消しながら小さく笑う。
須藤はソファーに横になると、天井を見上げた。
「よく考えてみろよ。アツシが勝手にキレて勝手に離れてったんだ。お前が頭さげる意味がわかんねーよ。」
「頭下げ行くわけじゃねぇよ。」
「じゃあ、何だよ。」
「俺は、ただ…」
修二は言葉に詰まった。須藤の言っている事もよくわかっていた。
アツシと会ってどうしたいのか。
綺麗事ならいくらでも言える。けれど修二はそんな事を言うために須藤を呼んだわけではない。
修二は正直に話しだした。
「高校卒業してからさ、アツシとはずっと腐れ縁みたいになってたんだよ。お前やつー君とは連絡途絶えても、アツシはしょっちゅう此処に来てた。…俺さ、ぶっちゃけうぜーなって思ってたんだよな。」
須藤は視線を天井から修二へと移した。
修二はまた煙草に火をつけて一口吸った。
「アイツさ、調子がいいっつーか、自己中なとこあんじゃん。俺的には週末ぐらいゆっくりさせろよって感じだったんだけど、いつもそんなのお構いなしで、まぁ俺もなんとなく流されて一緒にいたわけ。楽しいとか大事だとか何も考えてなくて、逆にコイツとツルめんの俺くらいじゃね?って思ったりしてさ。」
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