クリアスカイ
―しかし、今思えば。
この瞬間から少しずつ歯車が狂いだしていたのかもしれない。
修二にとって人生は想像よりもずっと平凡で、波乱万丈な人生を送る人間はわずか一握り。
そう思っていた。
普通に働いて普通に結婚してやがて年老いていく。その過程に様々な波があっても振り返ればとるに足らない事で、いつか笑い話にさえなる。
それは漠然と当たり前のように思えていて、決して自分も例外ではない、と。


日常などわずかな歪みで簡単に揺らいでしまう事はわかっていたはずなのに。


―暑さの余韻だけ残して少しずつ陽が落ちはじめていった。

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