残業しないで帰りなさい!

でも、優香さんに「ごめんね」って言われたら、なぜかわからないけど、あっという間に涙があふれて、ぽろぽろ落ちた。

「私、香奈ちゃんがそんなに気にしてたなんて知らなかった。ホントにごめん」

何も言えなくて、ふるふると首を振った。
どうしてこんなに涙が落ちて来るのか自分でもよくわからない。

私、優香さんに謝ってほしかったの?
いや、そういうことじゃない気がする。

事件のことは自分の中で区切りが付いたって思ってたけど……。
自分でも気が付かないふりをしていたけれど、まだあの言葉が心に引っ掛かっていたのかもしれない。

まだ心のどこかで自分を責めていたのかもしれない。

でも、どうして優香さんがあんなことを言ったのかその理由がわかって、そのことを優香さんが謝ったことで、事件に遭ったのが本当に自分のせいじゃなかったんだって、やっとハッキリ理解したのかもしれない。

そんな風に理屈でいろいろ考えたら、少し落ち着いてきた。

「……優香さん、本当にもう気にしてません。だから大丈夫です」

「そう?」

「はい」

そう言って顔を上げた時、ふわっと頬に清々しい空気を感じた。

私、また一つ、自由になった気がする。

翔太くん、私が心のどこかでこの問題を解決しきれないでいたことに気が付いていたの?
だから、あんなことを優香さんに聞いたの?
それとも、ただ聞いてみたかっただけ?

あなたといると、私はどんどん自由になる。

あなたの存在は強烈です。
あなたは私の人生をぐいぐい変えていく。

人生がどんなに変わってしまっても、あなたと一緒にいられたら私はそれだけで幸せです。

むしろ、人生が変わっていくことを楽しみだと思う。

私はあなたに夢中です。
ずっとあなたのそばにいたい。
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