残業しないで帰りなさい!

荷物もまとめていよいよお休みに入る帰り際、北見さんは高野係長に挨拶をしていた。

「ご迷惑をおかけしますが、しばらくお休みさせていただきます」

「まあ、今のうちにゆっくり体を休めておきなよ。生まれてからが本番だからさ」

高野係長は二人のお子さんのお父さん。育児の大変さをわかっているらしく、苦笑いをしながら手を振った。

営業課の人たちに笑顔で挨拶をしてフロアを後にした北見さんを見送りに、私と白石さんは荷物持ちを兼ねて下まで一緒に向かった。

今日は旦那様が下までお迎えに来てくれているらしい。

北見さんの旦那様ってまだ見たことがなかったから、ちょっと楽しみ。

「旦那様ってどんな方なんですか?」

「すごいカッコイイって聞いてますよー」

「そんなガセネタ誰から聞いたの?ただのオッサンだよ?ホント期待外れだよ」

「えー?またまたぁ、嘘ばっかりー」

ポーンと言う音と共にエレベーターの扉が開く。

北見さんの後ろについてエレベーターに乗ろうとしたら、背の高い男の人が私たちと入れ違いで出て行った。
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