嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「あのバスルーム、床を濡らしちゃいけないんですよ?」

「知ってるよ。床にタオル敷けばいいじゃん」

 ああ、即答。

 もう私は一緒にお風呂に入ることから逃れることはできないんだ。

 いいんだけど。嫌なわけじゃないんだけど。

 ただただ、恥ずかしいだけで。


 家に帰った途端、バスルームに入って楽しそうにお湯の蛇口を捻る隼人さん。湯気を上げるバスタブを覗き込む背中は鼻歌でも歌いそうな雰囲気。

 かわいいな、なんて思ってしまう。

 結局私は隼人さんなら何でも許せてしまう。私はきっと隼人さんを好き過ぎて重症なんだ。

 最近お仕事が忙しくて大変そうだから、こんな風に楽しそうな背中を見ることができるのは嬉しいけど。

 ……どうやって一緒に入るのかな??

「入ろ?」

 ぼーっとしていたら、いつの間にか私の背後に隼人さんがいて私のカーディガンに手をかけたからビクッとした。

「ここで脱ぐんですか?」

「じゃあどこで脱ぐの?」

「……」

 確かにここで脱ぐしかないんだけど、やっぱり恥ずかしい……。きっと隼人さん、こうやってどうしようって困ってる私を見て楽しんでる。もう意地悪王子になってるのね?

「で、電気消してください!」

「雪菜、もうそういう感じなの?」

「ち、違います!そうじゃなくって」

「あはは、ごめん。わかってる。それにさ、別に一緒に風呂に入ったって、変なことするつもりはないから」

……いつも翻弄されてしまう私。それになんか聞いたことのある台詞。隼人さんがそう言うなら、きっと変なことはしないと思うけど。
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