嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
慌てて隼人さんを見上げた。
「あんな狭いシャワールーム、二人も入れませんよ?」
「いやいや、バスタブあるじゃん」
あの使ってないバスタブ?一応掃除はして綺麗にしてあるけど。
「こっちに来てから一度も風呂に浸かってなかったからさ、たまには浸かりたいし」
「それなら何も一緒に入らなくても。隼人さん、一人で浸かればいいじゃないですか」
私が少し突き放した言い方をすると、隼人さんはすごく不機嫌な顔をした。
「雪菜、そんなに冷たいこと言うの?ふーん、そう。そんなこと言うなら、今ここでドイツ人もびっくりするようなすごいキスするよ」
「ええっ!?」
「どっちがいい?今すごいキスをするのと、帰ってから一緒に風呂に入るの」
「……」
そんな選択……。どんなキスかわからないけど、今ここですごいキスなんてされたら恥ずかしくて大変。でも、一緒にお風呂に入るなんてこっちに来てから初めてだし、それも恥ずかしくて大変。
だいたい、なんで私が選ぶ感じになってるんだろう。隼人さん、ズルい。
私が何も言えないまま赤くなっていると隼人さんはいたずらっぽく笑った。
「じゃあ、風呂ってことで」
「ええっ!」
「キスがいいの?」
「い、いえ、そういうわけでは」
「じゃあ、早く帰ろ」
隼人さんはニヤッと笑って私の手を握ると楽しそうに歩き出した。うきうき嬉しそう……。そんなに一緒にお風呂に入りたいの?