嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
「雪菜が阿部に触らせたりするからいけないんだよ」
「それは違います。触られたんです」
「……なんか雪菜、やっぱりいつもと違う」
そんなこと言って不機嫌な顔をしてるけど、隼人さんだって人前でやきもちを妬いたり、人前でベタベタしたりして、いつもと違うよ?
見上げると、目をそらした顔がなんだか可愛くて思えてきて、腕を伸ばして首に巻き付けたら、隼人さんは驚いた顔をして私を見た。
普段は私からこんなこと、しないもんね?
隼人さんを驚かせたのが嬉しくて、いい気になった私はつま先立ちの背伸びをして、目を閉じてそっとキスをした。
隼人さん、驚いた?
首を傾げて見上げると、隼人さんは困ったような照れたような表情をしていた。
彼の頬を赤くするなんて!思わずにんまりしてしまう。
でも、彼が大人しく照れているなんて一瞬の出来事で。すぐにその瞳は正気を取り戻して、主導権は奪われてしまった。
「ゆーきーなーっ!こんなことするなんて、覚悟できてるってことだよね?」
「きゃあっ!」
そうなるように仕向けたと言えば仕向けたのです。
でも、勢いよく抱き上げられて、柔らかく唇を押し付けられたら、ドキドキしすぎて少し怖じ気づいてしまう。
でも、このくらいでドキドキしているわけにはいかないのです。私は今日、隼人さんに言わなければならないことがあるから。
ベッドに沈められても、じっと目をそらさず見上げる私を、隼人さんは困ったように見つめた。
「雪菜、どうしたの?本当にいつもと違う」
「あ、あのね、隼人さん……」
いざ、言おうとするとドキドキ緊張して口の中がカラカラに乾いた感じがする。
「どうした?何か、あった?」
少し不安げな瞳。大丈夫、隼人さん。不安になんてならないで。
手を伸ばして頬に触れた。そして、頬の肌の感触を指先で確かめながら、もう一度勇気を出した。
「あの……ね。今日ね、私、思ったの」
「何を?」
「えっと、その……。あのねっ、私、隼人さんの子どもが欲しいなって、思ったの……」
「……」
大きく開いた隼人さんの瞳が揺れたように見えた。