嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 斉藤支部長はカエルに似ていて、阿久津課長はキツネっぽい。そんなことを思いながら、隼人さんの影からじっと二人を観察していた。

 隼人さんによると、流通改革を推し進める隼人さんと人員整理派の斉藤支部長はぶつかることが多くて、阿久津課長は斉藤支部長の直属の部下だけど、隼人さんの流通改革に理解を示して協力してくれているらしい。

 会社に隼人さんのことを理解してくれる人がいて良かった。

 隼人さんならきっと一人でもやり遂げてしまうだろうけれど、それでも味方になってくれる人がいるに越したことはないもの。だから、それを聞いてちょっと安心した。

 阿久津課長の奥様はしっとりした美人で、にっこり微笑みかけられたらドキドキしてしまった。聞けば小学生と幼稚園生のお子さんがいるらしい。とてもそんな風には見えない。

 その時、斉藤支部長のシャム猫みたいな奥様から「日本から来ている奥様方だけで集まる会を開いているの。いらっしゃらない?」と得体の知れない婦人会的な何かに誘われた。

 一人で行くのは怖いな……。でも、日本人だけらしいし。日本語通じるならいいかな……。

 私があんまり悩むから、隼人さんに「無理しなくていいんだよ」って耳打ちされたけれど、最近ずっと家に一人でいるだけだし、勇気を出して行ってみることにした。

 ホームパーティーには、私たちのように夫婦で来ている人もいれば、一人で来ている人もいた。

 たくさんの人に挨拶をしてお話しをしたけれど、こんなに大勢の人と会うのは久しぶりで、名前を覚えるので精一杯。

 結局、ホームパーティーは私が恐れていたようなものではなく、ただ家に集まって、楽しく食べて飲んで話をする、そんな賑やかな会だった。

 終わってみればそんなもの。

 そうほっとしていたら、帰りがけに隼人さんが倉庫街の夜景を見に連れて行ってくれた。
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