嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 花ちゃんはズイッと顔を近付けた。

「まずは基本中の基本!基礎体温、ちゃんと付けてる?」

 あれ?いたって普通の内容……。ちょっと安心しちゃった。

「やっぱり付けた方がいいのかな?」

 基礎体温とやらは聞いたことはあるけれど、ちゃんと測ったことはない。だって、朝イチで測るんでしょう?
なんか、測りづらいんだよね。

「付けた方がいいに決まってんじゃない!排卵日は絶対に把握しといた方がいいよ」

「……そうなんだ?」

「あーもうっ!やだなー、雪菜そこから?これは手がかかりますなっ」

「なんか、すみません」

 私がペコリと頭を下げると花ちゃんは大袈裟に腕組みをした。

「いやいや、落ちこぼれの生徒ほど可愛いものだよ!ニャーハッハッハ!」

 花ちゃん、なんだかとっても楽しそうね。

「でもさ、隣で主人が寝てるのに体温測るの、気後れしちゃうなあ」

「そんなこと気にしてたら、なんにもできないよ?知らない仲じゃないんだし、堂々と測っちまいな!」

「……はあ」

 もう既にハードルが上がってしまった。それともこのくらいは当たり前?

「雪菜、女子用のちゃんと細かく測れる体温計持ってる?持ってないなら帰りに買いに行くからねっ」

「は、はい……」

 体温計は普通のしか持ってない。……この際ちゃんとした体温計を買って、形から入るのも悪くないかもね。

「基礎体温は朝起きたら、動く前にすぐ測るんだよ?細かくちゃんと毎日付けるんだよ?」

「うん……、わかった」

 そんなことより、花ちゃん?ずいぶん熱く語っているけれど、料理のレシピもロクにメモを取らない花ちゃんが、基礎体温なんて記録していたのかな?

「花ちゃんは毎日ちゃんと記録してたの?」

「そりゃあ、もちろん」

「ホントにー?」

 花ちゃんには悪いけど疑いの目を向ける。

「ホント!だって、危ない日を知っておきたいじゃん」

 ああ、なるほど。そっちね。

「危ない日、ねえ」

「そそっ!急に体温が低くなる日が排卵日だからね」

「ふむふむ」

 それも聞いたことはある。私がうなずくと、花ちゃんは急に眉をひそめて耳打ちの姿勢をした。

 日本語だから何を話しているのか周りにわからないとはいえ、さっきまででっかい声で排卵日がどうこう言ってたのに急に耳打ち?今さらだと思うけど……。
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