嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 花ちゃんが「一度行ってみたかったのー!」と連れてきてくれたのは、エルベ川沿いにあるお洒落なカフェレストランだった。

花ちゃんの大好きなカリーヴルストもメニューにあったけれど、私たちはさっき食べ過ぎてお腹いっぱいだったから紅茶だけを頼むことにした。

「このお店の近くで日曜日にフィッシュマルクトやってるよ?来たことある?」

「うん、一度だけね」

 フィッシュマルクトは毎週日曜日にエルベ川沿いで開かれている朝市。朝市、と言ってもかなり大規模な市場で大勢の観光客が押し寄せて来る。市場で隼人さんが頼んでくれたスモークサーモンのフィッシュバーガーはとても美味しかったけれど、人混みがどうにも苦手で一度しか行かなかった。

「一度だけ?あんなに楽しいのにー」

「花ちゃんは好きかもね」

「うん!」

 花ちゃんは賑やかなのが好きだもんね。

「で?」

「ん?」

 花ちゃんが覗き込んできた。

「で?何を話したいの?」

「あっ、うーん、えっと……ね」

「旦那さんと喧嘩でもした?」

「あ、違う違うっ!」

 そうきたか!違うのです。でも、なんて聞こうかな……。

「じゃあ、なあに?」

「えっとね、花ちゃんって、できちゃった婚って言ってたでしょ?」

「うん」

「その、どのくらいで子どもができたのかなって、聞いてみたくて……」

「おっ!そういう話?アタシはねえ、どのくらいだったかなー。半年くらいだったかな?」

「エッ?そうなの?」

「うん、そうだよ」

 あれ?もっと早かったのかと思った。できちゃった婚なんて言われるとあっという間にできちゃったみたいに聞こえるけれど、実はそうでもないのかな?

「雪菜、子ども欲しくなった?」

「……うん」

「で、このアタシに意見を聞きたいと!そういうことねっ!」

「う、うん。そういうこと……」

「そういうことなら、まっかせなさーい!大船に乗ったつもりでさ」

 大船に乗っちゃうの?花ちゃん、何するつもり?
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