【完結】セ・ン・セ・イ
「センセーのおかげで、英語の点があがったよ」

わざとらしくそう笑いかけてくる朱莉には、もう【わざと間違えている】行為を隠そうとする意志が感じられない。

「キミ、俺をからかってんの?」

「どーして?」

悪戯な笑いを湛えたままに小首を傾げる彼女に腹が立った。


俺はまだ教師になりきれない。

彼女の根底に何かそうさせる問題の根が隠れているというのに、それを汲み上げて解決してやることも出来ない。

聞き出すことも出来ずに、いやそれ以前に、踏み込もうとする前に自ら一線を引いている。


生意気な俺の生徒はしたり顔で足をぶらぶらさせる。

前回より点数あがったよ、文句ないでしょう――とでも言いたげに。

「褒めてくれないの?」

少し甘えたような口調に、余計にハラワタが煮えくり返った。

「これが朱莉ちゃんの実力マックスの点数なら褒めるけどね」

そうとは思えない、だから褒めないよ――言外に伝えた思いに、彼女は不満げにぷうっと頬を膨らませた。

「頑張ったのに」

「どうだか」

それっきりそっぽを向いた瀬戸朱莉は、その日一日口を聞いてくれなかった。

ただし、期末試験の間違えた箇所を再び解かせてみれば、彼女は案の定あっさりと全問正解してみせた。
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