ESORA PINK《短》
廉は私のことが嫌いだ。

だから態度が悪くても口が悪くても、それが当然のことなのだけれど。

「ちょっと、今日くらい優しくしてくれたっていいんじゃないの?」

「なんで俺がお前に優しくしなきゃいけないんだよ」

私がそう伝えると、間髪を容れずにそう言いながら本当に嫌そうな顔をする廉。

そんなに私に優しくするのが嫌なのかと、怒るのも忘れてただただ呆れてしまった。


「まあいいけど。とりあえず、好きなだけ飲みなさいよ」

廉が優しくしてくれないのなら、八智に優しくしてもらえばいいだけのことだ。

私は呆れる気持ちをなんとか隠して、テーブルの上のお酒たちを指差した。

「言われなくても、お前になんか遠慮しないよ」

そう言うと廉はボトルの中身を一気に半分ほど飲み干した。

私に遠慮なんかしないということを、行動で示したということだろう。

人の厚意は素直に受け取りなさいって高校生の頃にも教えてあげたのに、全然身に付いていないらしい。

「まあまあ。ほら、姫さん、グラス空いてるよ」

私の膨れた頬に気付いた八智が苦笑いを浮かべながら、私のグラスにウイスキーを注いでくれた。
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