とけるほど、抱きしめて
新しい恋
あれから…。松下は新しい売り場と商品製作の仕事に没頭していた。
俺は、
店舗周りで得たアイデアを松下に伝え
細かい打ち合わせをする為
店に戻った。


「松下、今日時間つくれるかぁ?」
「はい、大丈夫です。」

「細かい打ち合わせを兼ねて飯でもどうだぁ?終わったら声かけてくれ。」
「わかりました。御一緒します。」


俺は、松下を連れて
例のBARに居た。
軽食と酒で乾杯した。

「松下、何かまだ悩んでるのかぁ?
友達とちゃんと話したのかぁ?」


「…。」
「…私、諦められなくて、酷い事して
しまった。」

松下がカクテルのグラスをギュっと握りしめ、一筋の涙を流した。

「話して?聞くから…。なぁ…。」
頭をそっと撫でた。

「山木さん…。」
自分のやってしまった事、
友達を傷つけてしまった事
俺は、ただ黙って聞いた。


BARを出て少し歩くことにした。
なんだか、側にいてやりたいと思った。
「俺ん家で飲み直しするかぁ?」
「山木さん…。行っていいですか?
今日は、一人でいたくないです…。」

「良し、飲み直しだぁ」
タクシーをつかまえて乗り込む。

「狭いけど、入って。」
「お邪魔します。チーフ?凄いマンションですね。」
「そうかぁ?叔父さんが海外転勤で使わないっていうから…。格安で借りてるんだ。」
「そうなんですか。」
「何?俺の給料で無理ってかぁ?」
「そんな…。」
「まぁ、座って」
ワインとグラス、簡単なおつまみがテーブルに並んだ。
「さぁ、飲もう?」
「はい、頂きます。」

他わいのない話しをしてたくさん笑った。
「松下…。いや…。カナ?
笑っているお前いいなぁ。
俺、そうゆう柔らかいカナ好きだぞ。」
「山木さん?」
「抱きしめていいかぁ?
守ってやりたいんだ。」
山木さん…。
優しく抱きしめた。鼓動がドックんと
私の身体に伝わる。
「真一、呼んで?」
「真一さん…。」
「うわァ〜ヤバイ。」
うふふ。何だが真一さん可愛い。
なんだろう。すっごくあったかい気持ちになる。
圭祐さんとは違う心地良さ?
素直な自分でいられる。
それからも、
私が、失敗して落ち込んでいたり、
お客様に叱られてうなだれてたり
そんな時、いつも真一さんは
頭を撫でて「大丈夫だ。」
そう言って笑った。
少しづつ心を溶かしてくれる真一さん
あなたの愛に包まれていたい。

マキ、今ならマキの気持ちわかる気がするよ。
ちゃんと、ごめんが言える。
圭祐さんと幸せになってほしいって。




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