コンプレックスさえも愛されて。




プロジェクトの目途がついて、漸く少し余裕ができる、って深く息を吐き出した彬さんに、お疲れ様です、と笑ったのは月曜日の夕方。
火曜日、同期の子との昼食から戻った私に、彬さんが擦れ違いざまに五分後に書庫に来て、と小声で伝えて部屋を出て行く。




「…失礼します…」

地下の書庫の扉を開ければ、明かりが点いているので人がいるのが分かる。
彬さん?と小声で呼び掛けて進んで行くと、背後でカチリ、と鍵を掛ける音がして腕を引かれた。



入口の扉の横の棚に隠れるようにして、いつものように彬さんに抱き締められる。
背の高い彬さんの胸にスッポリと抱き締められると、私はどうしたらいいのか分からなくなってしまう。



「あー、やっと沙耶香に触れた…すげぇホッとする…」

頭上で、はああと深い溜息が聞こえて、恥ずかしいけどやっぱり嬉しくて。
お疲れ様です彬さん、と腕の中で顔を上げて笑い掛けると、そのまま唇を塞がれてしまった。



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