○○するお話【中編つめあわせ】




吸血鬼は恋をするとその相手の血しか飲めなくなる。相手を生かしたいなら吸血衝動を自分から耐え餓死するしかないらしい。
吸血鬼は恋をできないというふうにもとれる。



***



この世界には階級がある。言わずも知れた神の存在は絶対で、その下に人間。
そして、神と人間の間に存在するのが俺たち吸血鬼だ。

とは言っても、吸血鬼の存在を知る人間はほとんどいないし、人間の意識の中では吸血鬼は仮想の世界の住人とされ、そのまま片付けられる事が多い。
それは、吸血鬼が人間を襲っても、吸血行為の前後、そして吸血鬼の存在を記憶操作をして人間の中から消してしまうからだ。
吸血鬼と人間の力の差は圧倒的だが、そこを見せつけて恐怖政治を敷きたいわけじゃない。

生きていくのに必要なだけの血液を確保さえできれば、それでよかった。
それに、血の味の好みもあるから人間の数は多い方がいい。

本気になればいつでも処分できるからこそ、高座からせせら笑いながら眺める。それが俺たち吸血鬼の共通の意識だった。
自分たちの方が高い位にいるのが目に見えて分かっているからこそ、できている共存だ。

――もとい。
俺たち吸血鬼のささやかな良心で成り立っている共存だった。


「今日、人間の間で流れてる面白い噂聞いたんだけど聞きたいか? アキラ」

街の隅にひっそりと建つ洋館。昼でも薄暗い部屋のドアを開けるなり言うと、幼なじみのアキラは「別にいい」とこっちも見ずに答えた。
何事にも興味が薄いところは昔から変わらんねぇなーと思いながら、アキラの寝転ぶベッドに近づく。

アキラも吸血鬼だが、俺とは見た目が全然違う。
俺は髪も瞳も黒いが、アキラは髪は金色で、瞳は黄色い。

吸血鬼もその辺は人間と同じで、髪色も瞳の色もバラバラだ。

馬鹿でかいベッドに俯きに寝転んでゲームをしているアキラの傍らに腰を下ろして話を続ける。

< 94 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop