二度目の恋の、始め方

「凛。今月の病院代なんだが……」

「お父さんは心配しなくても大丈夫だよ。生活保護も出るし、失業保険だって残ってる。あとはバイトで遣り繰り出来るから」

「そうか?すまんな」

安心したようにベットに横になるお父さんに、心配さすまいと必死で笑顔を作る。一万人に一人の確率で肝臓の適用ドナーが見付かっても、手術費用は膨大な額だと担当医は私に告げた。それでも諦めたくない。
例え99分の1の確率でも、私は残りの1パーセントに望みを繋げたい。

「川嶋晶さ~ん。検査の時間ですよ~」

「ウゲ。注射が下手なねぇちゃんかよ。凛~、俺、生きて帰れねぇよ~」

「ハイハイ行きますよ。あら凛ちゃん、顔色良くないみたいだけど大丈夫?」

いつもお世話になっている馴染みの看護婦さんは、父の失礼な言葉をサラッと交わして、私の顔を心配そうに覗き込む。

「あ、平気です。昨日遅くまで勉強してて、それで寝不足なだけです」

「あまり無理しちゃ駄目よ。ツラいようなら内科で処方箋出してもらおう。お父さん、いつも凛ちゃんを自慢してるのよ。でも頑張りやさんだから心配なんだって」

「お、おい、余計なこと言ってじゃねぇよ。病院ごと訴えるぞゴラ」

「お父さん!」

……もう、ホント恥ずかしい。
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