二度目の恋の、始め方
「失礼しま~す」
部屋に入ると、耳を塞ぎたくなるほどの大きな音でマイクを持って熱唱している男女。ガラステーブルにジュースを置いて部屋を出ようとすると、死角になるスペースで濃厚なキスをする男女に驚いた。
と言っても男の子の方は壁を背に微動だにせず、どちらかと言えば女の子の方が迫っている感じで、まさにされるがまま……
「お~雄大、店員さんに見られてんぞ~少しは場所わきまえろ~」
「………っ、!」
「公衆の面前で盛んじゃね~ぞ」
大音量の曲も、周りの野次も聞こえなくなるほど時間がスローモーションで流れる。だって会いたくて、触れたくてどうしようもなかった彼がすぐソバに居るんだもん。
「……ゆ、雄大……」
自分の名前が呼ばれたことで、栗色の茶髪から覗く彼の瞳が女の子からゆっくり私へ移動する。一瞬、驚いた表情を浮かべた彼は、唾液で濡れた唇を拭いながら意地悪そうに口角を上げた。
「宮路くんもっと、お願い……んっ!」
冷えきった瞳で、私を見据えたまま女の子の腰に腕を回して再び濃厚なキスをする彼は、もう私の知っている彼じゃない。