二度目の恋の、始め方

『川嶋、凛さんだね。キミのお父さんをウチで引き受けても良いと思ってる。勿論、医療費、その他諸々は病院で負担しよう』

『ほ、本当ですか!?』

『息子と別れるのを条件に、だ』

あの日、院長室に呼ばれた私は一瞬、目の前が真っ暗になって、何を言われたのか理解するのに時間がかかった。それで父さんが助かるならと、喉の奥から必死に絞り出した声で『分かりました』と返答した。

あの時の私には、そうする他、選択肢なんてなかったのだから。


「凛ちゃん、これ24番の部屋にお願い出来る?」

「はーい」

駅前のカラオケ店。時給が高い上にある程度融通もきくので、今の私には申し分のないバイト。英高校では勿論禁止されているけど、特待生の特権として10時までの勤務なら許されている。

「……少し短い、かな。まぁいっか」

赤のポロシャツに黒のプリーツスカートがこの店の制服。いつもより少し短めの膝上スカートに違和感を感じながら、オーダーのジュースを持って24番の部屋に向かう。
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