触れない温もり
やっと言いたいことを思い出した!

スッキリした!!

これで後はこの自称幽霊が答えてくれたら完璧だな!


「それは……」


「それは……!?」

待ちきれずに思わず顔を近づけてしまう。

近くで見れば相変わらず綺麗な顔だ。

ってそうじゃない!!
早く答えろよ!!


「それは…、わかんないんですよ」


にこっという擬態語が似合うような微笑みを見せる幽霊少年。


「…………」


もう訳のわからない俺。



ひとつ分かったことは……

「もしかして肩ぶつけようとして当たらなかったのって……?」

「あー、そうです。僕が幽霊なので触れられなかったんですよ。ほら。」

そういいながら店の壁に手を突っ込む。

どんなにぐるぐる回してもそこには何もないかのように負荷なく動く。


「まじかよ……てか本当にいるもんだな幽霊って……」

「自分でもびっくりですよー」

「じゃあ、自分の事について何もわかってないのか…?名前とkーー」


てぃろりろりん♪てぃろりろりん♪



「あ、母さんから電話……ちょっと悪い」

ポケットからスマホを取り出し、緑色の受話器をあげているマークのボタンをおす。



ーーピッ


『あんた!どこほっつき歩いてるの!?

最近、髪染めるわ、耳に穴開けまくるわで!
危険なことしてないでしょうね!?人様に迷惑かけてないでしょうね!?

今日は入学式で高3生も帰り早いはずでしょ!?
分かったら早く帰ってきなさい!』

「え、ちょっ、まっーーー」

ーツッーーーープープープー……


……俺の話を聞くまもなく喋るだけ喋って切りやがった………

てか、母さん、仕事夜からだから昼間は監視されて嫌だな……


しゃあねぇ…帰るか。


足早に歩きながらスマホをしまう。

「悪い!いろいろ聞きたかったんだが親に呼ばれてっから帰るわ。
じゃあな、また明日くらいに聞きに来るわ」


「行かないでっ!」


突然、幽霊少年はそう叫んで、こっちに走って近づいた。


「お願いだから行かないで。」


今にも泣きそうな声で呼び止める、幽霊少年。


「どうしてだよ。また明日来るって言ったじゃないか」

今度は俺が呆れる番か…


「せっかく…せっかく、僕のことが見える人にあったんだよ?独りでずっと路地裏にいるのはもう嫌だ。
それに……それに………」

上目使いの目に涙が溜まっていくようだった。


「お、おいおい泣くなよ……それにどうしたんだ?」

「裏切られるのは……怖いから………」

うつむいて出したその声は、震える体から何とか絞り出しているようだった。

俺はそれを見ながら無意識に幽霊少年に手を伸ばしてしまう。


男子にしては狭い肩幅に白い肌……

それに吸い込まれるように手を伸ばし……

肩に触れるはずの手が空をきる。


そこで我に帰るわけだが。


ーーーー!?
なに俺はこいつを抱きしめようとかしてんだ!?


落ち着け…俺……

……同情と違う方向に進みかけたぞ……


「ま、まあ、何かトラウマかなにかがあるのかは知らねぇが、落ち着け。
俺は何があっても裏切らないから。」

なんの確証もない言葉。

だけど、幽霊少年を励ますのには十分な言葉だった。


涙のひいた幽霊少年は俺についていくのを諦めたように、無言で路地裏の奥に進む。

……やっぱ心配だな………


「おい」

「なんですか」

「俺の部屋散らかってるかもしれねぇし、昼間はうるさい母さんがいるがそれでも構わねぇか?」

「…いいんですか?」


振り返り意外そうな顔をする。


「早く決めろよ。俺、母さんに呼ばれてるんだから」

そう言ってまた足早に歩き出す。



今度は、その後ろに涙のあとの残った笑顔をみせる幽霊を連れて。
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