オレンジ。~星空の下で。anotherstory~
歩くのが早い彩花は
スタスタと先へ行ってしまう。

俺はやっとの思いで追いかけて、
彩花に追いついた。

着いた場所は、街でも割と大きな
サッカーのグラウンド。

中には、数人のグループが
サッカーをしていて、
それを彩花はフェンス越しに
じっと眺めている。

「……彩花?」

振り返る彼女は
びっくりした顔をしているが、
何も言わず、こちらを見つめている。

「……あー、尾行(つけ)るつもり、
なかってんけどな。
最近、彩花様子が変やから、
何かあるんかなと。」

「……うーん、千洋くんには
言ってもいいかなぁ。
わたしね、好きな人がおるんよ。
でも……その人、彼女がおって。
諦められんから、こうして
彼がサッカーの練習するの
眺めてるんよ。
……彼女に見つからないように、
ヒヤヒヤしながらだけど。」

……淡い、想い。

叶うことは無理だけど、
眺めていることは出来る。

俺はそんな彩花を見ていて、胸が痛くなった。
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