少女の願い
だが、少女は一瞬寂しそうな顔をしただけで、すぐに笑顔になった。

「それでもいい。パパにはコートがいるもの。ママは、一人でいなくなったから、きっと寂しいと思うんだ。」

そう言って、開いたままのドアを見る。

『にゃあ。』

玄関には、自分を主張するかの様に鳴く猫が一匹、ちょこんと座っていた。

…仕方ない。
言ってしまったからには、後には引けない。

どのみち、少女はこの一年、苦しんだろう。

だったら、母親の元へ連れて行った方が、少女にとっては幸せなのかもしれない。

僕は自分に、そういい聞かせた。


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