お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
『はい』



慎君も仕事中だろうけど、お兄ちゃんよりは出やすい筈。

案の定、電話にもすぐ出てくれたし。



「慎君?すぐ来てくれない……?」



『何で』



「お湯被っちゃって……。痛いんだよね……」



呆れて溜め息を吐いてる慎君を無視して電話を切り、タオルを濡らし直す。

左胸と、ヘソの上の赤くなってる部分にタオルを乗せて、ソファーで横になる。

あまり感情を表に出せなくて、冷静ぶるも、かなり痛む。



「やっちゃったな……」



病院に行ったら、お兄ちゃんは騒ぐだろう。

かと言って、行かなくても煩いだろう。



「心優」



「慎君……。私、どうしよう」



ようやく来てくれた慎君。

私はお腹だけを見せて、病院に行くかどうかの判断を委ねる。



「どうしたら、自分で湯を被るんだよ」



「どうしてだろ?;;」



呆れてる慎君に腕を引かれて起き上がると、コートを肩に掛けられた。

言葉はなくとも、病院に行くという事だろう。

小さい個人病院はお昼休みが多い時間帯。

救急指定されてる中規模の病院を探してくれた慎君に連れられて、何とか診察を受けた。

消毒され、軟骨を塗って貰って治療は終了。

傷は残るものの、特に酷くはなさそう。

潰れた水膨れの部分を乾燥させ、皮膚の再生を持つようにとの事。



「お騒がせしました」



「大したことなくて良かったな」



ぶっきらぼうだけど、優しい慎君。

本当、大したことなくて良かった。
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