お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
いつも通りに過ごし、お兄ちゃんの帰宅を待つ。

お味噌汁が出来た。

今夜のメインは鮭のホイル焼き。

作り置きしといたひじきを出して、今日は和食で纏めた。

なのに、18時になり。

19時を過ぎても帰って来ない。

鳴らないスマホ。

今まで帰りが遅かろうと、無断はない。

私から連絡を取ろうとした事もない。



「……もしもし、慎君?」



待てど暮らせどで、虚しく過ぎた時間。

日付が変わる頃、眠る事も出来ずに慎君に電話。



『帰ってない?』



「うん……。今までこんな事なかったし、けど大人だから、ヘタに連絡は止そうと思ってるけど、寝れなくて……」



『風花のところか、俺から連絡するか?』



「慎君は、来てくれないの……?」



『…………』



…何て……。

何、言ってるんだろ……。

何も聞こえない通話口。

困らせてる。



「ごめん、慎く――…」



『“ピピッ……”。今から行く』



聞こえた電子音は、車の解錠する音か。

慎君、来てくれるの……?

“今から行く”と言って切れた電話。

スマホを胸に抱きながら、ソファーの上で蹲る。

お兄ちゃんが心配なのは確かだけど、慎君が来てくれるなら、安心して寝れそう。

玄関の鍵は、お兄ちゃんが酔っ払って帰って来ても良いように開けてある。

エントランスの暗証番号は知ってる。

後、少しで来てくれる。

もう、不安はない――……。





< 42 / 57 >

この作品をシェア

pagetop