さかさまさか
朝方、5時に終わりコンビニ。
おにぎり買って帰ろう。
ジャスミン茶と、ヨーグルト。
会計を済ます。
これが、私の日課。

『さくら?』
久しぶりだな。と声がした。
見ると、タバコをふかしてベンチに座っているグレーのスエット姿。
逢いたくて、逢いたくなかった。
相手だった。

『何?誰?死ね!』と
私は、叫んだ。
『俺、わかるよな?亮太!』

『うん。』

『何してんの?』

『仕事帰りです。』
『なんで、敬語?』
『そちらは今日休みで、腹減ったからコンビニに、火曜休みなんてないから、実家に帰ってきた』

『では。』

『待てよ。久しぶり。』

『はい』

『元気だった?』
『はい。』

私は、涙と、胸の奥からくるざわざわしたものが溢れ出さないように我慢した。

『良かった』と、懐かしい顔がにっこりした。
『じゃあね!』と私も笑った。

『うん。またな』とあいつも笑った。

またなって、ある訳ないじゃん。

だから、叫んだ。
『気にしなくていいよ。もう!大丈夫!』

あいつは、少し涙目で、笑った。

大人になって、かっこ良くなった亮太と、今のあたしの輝きの鈍さをなんとも言えない重い気持ちと、自転車を引きずり帰った。
ゆっくり歩こう。
泣きたくないのに涙が出てきた。
あの日から、私は色々と諦めたのかも知れない。

春田亮太、忘れたくても忘れられない相手。

家に着くと、『山田!洗剤貸して~。』
と林君が待っていた。

会社が、借り上げてるアパートに暮らしているため、みんな知り合いという訳だ。
『醤油は?で、今日は洗剤?』
『遅かったなぁ~。』
『はい。』と洗剤のボトルを渡すと、その手をひっぱられ口をふさがれた。
モヤモヤを消したいがために、いつも以上に林君の唇をふさいだ。

『凄いな~なんかあったん?』
『何にもないよ。』
『やめとくわ』
『なんで』
『なんか、恥じってる山田がそそるねん』
『嫁は、恥らうの』と嫌味をぶっかました。
林君は、単身赴任
歳も近いしすぐ打ち解けた。
何回か飲んで、
私は、何してんだろう。

昔は、もっとわかり易かったのに。
好きか、嫌いか、付き合おう!

何もかも、曖昧で
とは言え、今の関係は楽である。
体だけ、心には、踏みこまない。







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