さかさまさか
半歩前に。
『らーちゃん。久しぶり?相変わらずダサいね~。』
『久しぶりに会って、何それ!ケンジ』
『やめてよ~。今はローラよん。』
こいつは、ケンジ、
そう、いわゆるグレーゾーン。
ほぼ、ピンク色な奴。

私の高校時代の唯一のお友達。
『らーちゃん。ナシゴレンお好き?』
『食べたことない~。』
『辛いよ。大丈夫?』
『行きたい!
あっ!そうだ…。会ったんだ。』
『ラーちゃんは、主語がいつもない』
『すいません。亮太に。』

『なんで?』
『たまたま』
『どこで?』
『コンビニ』

『たまたま?』
『だから、たまたま。』
『かっこよかった?』
『うん。自分が情けなかった。』
『もう良くない?ラーちゃん変わり時なんじゃない?』

『いいよ。今のままで良くないど』
『あっ!着いたわ』
アジアン食堂に着くと、慣れた感じで
ケンジが二人と指で合図し、席に通される。
座った途端。
『ラーちゃん、ご飯終わったら洋服買いましょうか?』
『なんで?』
『昔みたいに、行きましょ?』
『うん』
『いつも、どこでかってんの?』
『通販』
『アァー。』
『色々な手触りや、色を選んでみよう?』
『ぼく、ラーちゃんには、かっこ良くいて欲しいな。』
久しぶりに、亮太を見て私は、自分が置いてけぼりになっているのを実感。
いや、体感したのかも知れない。
だから、こう言った。
『すぐは、無理だけど少しずつでいい?』
『今日半歩出して、明日も半歩出したら大きな一歩だよ。』
とケンジが言った。
私は、涙が止まらなかった。

今まで、私が踏み出すまで黙って見ててくれた事。

いつも、ケンジは私の味方だ。




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