さかさまさか
久しぶりに来たなぁ。
スクランブル交差点。
うまく渡れた。
ニンマリしてると、ケンジが嬉しそうに
微笑む。

人ごみの中に紛れると、息苦しさと、意外なワクワクもあった。

久しぶりに見た。
丸いビル。

『ラーちゃん来たよ。』
『きたね』
『さぁー。久しぶりのエッジから流そうか』
『まだイケルかな。』
『まだ、大丈夫かなぁ~?』とケンジが笑う。
店内を物色しつつおしゃべりは止まらない。
『ラーちゃんママ元気?』
『元気よ!』
『妹は?』
『可愛いよ』
『お父さんは?』
『いい人だよ』
『本当の方は?』
『行方不明』
『おばぁちゃんは?』
『最近は、ボケてきたらしい、妹見てさくら。って言うらしい』
『大変』
『これどう?』
『また、黒?』
『昔より、値上がりしてない?』
『8928円確かに、このセーターだったら
昔は、4980円だったよねー。』
『うん。』
『ぼくのラーちゃんが戻ってきた』

『ケンジさ、仕事楽しい?』
『まぁ、まぁ。』
『隠してんの?』
『うーん。なんとなくグレーにしてる。』
『別に自分から言う事でもないか~。』
『そだね~。』
『ラーちゃん。ワンピにしな!』
ケンジがネイビーのワンピと黄色のカーディガンがセットアップされてる物を手にした。
『これ中心に、ジャケットやら、Gジャンやらで遊べるじゃん。』
『そだね』
早速試着して、ケンジが似合うと言うので、購入した。
とても、嬉しかった。

『お茶しよ』
『ラーちゃん。飛ばしすぎたね。ごめん』

『ありがとう。』
『ラーちゃん。次は、髪だね。』
『千円カットはダメかぁ~。』
『形作ってもらって、すくとかは千円カットでって、先輩が言ってたよ』

『ふーん』
『亮太の事まだ、忘れらんない?不倫中の山田さくらさん。』
『うーん。ふっとした時に、出てくる。』
『例えば、』
『雨の日とか』
『泣けてくるね』
『うん』と苦笑した。
こいつの前では、素直になれる。




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