クールな先輩の心を奪う方法
今日こそは、梓の話しを聞こうと思ってたのに、今日に限って、梓には先約があり、その上・・・

「佐々木さん、悪いんだけど、今日中に、このロムを仕上げて、B社に持って行って」
「…はい、わかりました」

帰り支度する私に、先輩から仕事を頼まれてしまった。
断るつもりが、今日は、断る理由もない。

…コツコツと仕事を仕上げていく。
先輩たちは、順に帰っていく。

私に仕事を頼んだ先輩は、接待とかで、先に会社を出てしまった。
…もしかして、仕事を押し付けられたのだろうか?

今更気が付いても、仕方がない。頼まれた仕事を疎かに出来るわけもなく、溜息をついて、再び仕事を始めた。


「…出来た~」
ロムを取り出し、パソコンの電源を切る。
今の時刻午後7時。…B社は遅くまで開いているので、今行っても十分に間に合うだろう。

私はロムをカバンにしまうと立ち上がった。

「…保田さん、帰ったんじゃなかったんですか?」
入り口から、オフィスの中に入ってきた保田さん。

定時には確か、オフィスを出ていたはずなのに。

「急に取引先から連絡が来て、出てたんだ。
…それより、佐々木は、こんな時間までまた残業か?」

「・・・はい」

そう言って苦笑いした私を見て、保田さんは溜息交じりに微笑した。

「今から帰るのか?」
「…いえ、これからB社に行くところです」

「今から?・・・何でこんな時間に」
「水木さんに頼まれて、ロムを届けに…それが済んだら、家に帰ろうと」

「…ったく、水木の奴、お前に面倒な仕事を押し付けて帰ったのか。

付いて来い佐々木」

「…ぇ?どこへ?」

「B社まで車で乗せていく」
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