Treasure
一方教室では、先に帰っていいと言われた綾女だけが残っていた。
周りには誰もいない。
残された綾女は、震える掌を握り締め、呟く。



「…何よ、何で……?」


いつしか彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
誰も居ない教室には、彼女の微かな嗚咽が鳴り響いている。

ぽたぽたと流れ落ちる涙を気にすることなく、握り締めた拳で机を叩いた。



「何でいっつのあの子ばっかり、ほしい物手に入れるんよ…」







そろそろ5時。


窓から映る景色は、真っ赤な夕焼けに覆われ、
遠くの方では哀しそうに、カラスが鳴いている声だけが響いていた。

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