Treasure
意外な人が刹那と一緒に居た。


「おはよ……何してん?」

「おはよ! 別に何もないよ?」


驚きもせず、焦りもせず、平然といつもと同じ、落ち着いた声で話す良紀。
ニコッと笑う。
目じりが下がって、優しい顔。

そうだ…あたしは、この声が好きなんだ。
透き通っていて、すごくおだやかな声。
落ち着く声。

顔が赤くなるのが分かる。


「…そうなん?」

「うん、遠野さんこそ、どしたん?」

「別になんもないけど…」

「ふぅん?」


ふわっと、風のように笑う良紀。
自然と、あたしも笑顔になる。

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