麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「今のは手加減してあげたのよ」

そっけない台詞に、ディセルは頭を抱えたくなる。

挑発してどうする!

セレイアはかよわい乙女、しかも丸腰だというのに。

ディセルは武器をさがして目を走らせる。

自分に扱えるかどうかはわからないが、やってみるしかない。なんとしてもセレイアを守らなければ。

「こんのやろぅ~!!」

逆上した賊の剣攻撃を、セレイアは右に左にさらりとかわし、いつのまにかその手に見事な槍を持ちすらりと姿勢よく構えていた。壁の飾り槍を手にしたようだ。

聖職者の乙女が槍など扱えるはずもない。

だが、なんだろう。

槍を手にした彼女の姿が、やけに堂に入っている気がする。

まるでなじんだ得物を手にしたような、セレイアの余裕のある表情。

賊も同じことを感じたのだろう。

剣をふりかぶったものの、彼女の間合いに踏み込めずにいると、彼女の方から動いた。
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